飲食店の開業準備では、必ず最初に具体的なターゲットを設定することが大事。詳細なターゲット設計は、開業準備を後押しするだけでなく、メニューの展開や座席の幅を決めたり、壁紙や照明の具合に影響したりと「どんなお店をつくればよいのか」という点が明確になるからです。
一方で、ターゲットを絞り込みすぎず、様々なお客さんにとって居心地の良いお店作りを心がけることも大切。飲食店のターゲットを定めるメリットや設計方法を解説します。
飲食店のターゲットを決めるメリット
飲食店のターゲットを設定することで、お店とお客さん、どちらにもメリットがあります。
開店準備の方向性が決まる
開業準備・店舗運営での土台となる、コンセプトづくりにターゲット設定は含まれます。
コンセプト設計の軸となる「5W1H」の中でも、「Who」に該当するターゲットはまず始めに決めておくべき事項。ターゲットが決まれば、立地や開店時間といったその他の要素も定まっていきます。
つまり、ターゲットを設定することでお店の目指すべき方向も具体的になり、「コンセプトを実現するには何を準備すればよいのか」が明らかになるのです。
コンセプトから考える店舗設計や飲食店の物件探しについては、こちらのページでも詳しく解説しています。
飲食店を開業!コンセプト作りのポイントを事例付きでご紹介>>
原価コストを削減できる
ターゲットに応じて、提供すべきメニューも絞られます。「出来る限り様々なメニューを提供したい」とお考えの方もいるかもしれません。しかし、ターゲット層のニーズを見極めてメニュー数を減らせば、原価コストが削減できます。
また、少なくすればスタッフがメニューひとつひとつに集中しやすくなる効果も。提供スピードと調理レベル双方のアップに繋がります。
「少ないメニューだと飽きられそう」という不安があれば、定期的に期間限定メニューを導入するのもおすすめです。
店舗デザインの視点で考えても、食器類やグラス、内装のテーブルの形式などにもターゲットを活かすことにより、コンセプチュアルで統一感のある印象づくりに欠かせません。
さらに、種類を絞り込んで準備できるため選定の工数や仕入れコストについても削減しやすくなります。
お客さんの満足度アップ。常連客が生まれるチャンスも
ターゲットを絞るということは、職業柄や好み、生活環境が似たような人が集まりやすくなります。そこで知らないお客さん同士が繋がれば、満足度もアップ。常連客が生まれるチャンスも期待できます。
またキャンペーンなど、お客さんが好むサービスの内容を定めやすくなるのも、ターゲット設定のメリットのひとつです。
飲食店のターゲット|設定方法とポイント
飲食店のターゲットは、いくつかの項目を立てて考えると、スムーズかつ具体的に設定でき、他のコンセプトの要素を決めやすくなります。
設定項目を立てる
飲食店のターゲットは、あたかも実在するような人物像で設定します。以下、詳細なターゲットをスムーズに設定するために役立つ項目例です。
- 性別
- 年齢
- 職種
- 所得
- 学歴
- 世帯規模
- 住所
- 趣味
上記のいずれかから2~3項目でターゲティングするのではなく、全ての項目について現実味のある設定を決めることが大切です。
「細かく決めすぎると商圏が狭まりそう」と思われるかもしれませんが、競合店との差別化には詳細なターゲティングが欠かせません。他店とのわずかな差異でも、それがお店の魅力となって店舗デザインにも活きていきます。
また、名前まで決めた上で、その人のライフスタイルやファッションといった部分まで定義する「ペルソナ」を作ることも選択肢。具体的な人物像を作り上げることで、明確なイメージが持てるようになるケースもあります。
飲食店のターゲット設定の例
描くべきターゲット像は、極端に高収入であったり、趣味に「○○(お店の看板メニュー)を食べること」であったりと、お店に都合の良いターゲットではありません。以下、飲食店のターゲット設定例です。
<例|とあるイタリアン料理店のターゲット設定>
- 性別:女性
- 年齢:30歳
- 職種:メーカーの営業
- 所得:年収400万円
- 学歴:大卒(文学部卒業)
- 世帯規模:独身。恋人がいる
- 住所:店から徒歩30分圏内。職場は店から徒歩10分圏内
- 趣味:ショッピング、美術鑑賞
このようにターゲットの属性を詳しく定めることで、需要がありそうなメニューや適切な価格帯、そして店舗デザインの方向性も決まっていきます。
例えば、「中堅社員であることを想定して、価格帯は平均~やや高めにしよう」「恋人と来店することを想定して、デートにも使えるようなシックな雰囲気の店内にしよう」また、「ターゲットは徒歩圏内を想定しているから、駐車場の面積は小さくしよう」など。
現実味のある詳細なターゲットの設定が、実際の顧客満足度に繋がっていきます。
設定後|ターゲット以外のお客さんにも居心地の良い飲食店に
近年、男性同士でスイーツ店に行く、女性がひとりでラーメン店や焼肉店に行くなど、従来のイメージに当てはまらないニーズが増えています。
そこで留意したいのが、ターゲット以外のお客さんが来ても常に居心地よく感じてもらえるお店作りをすること。例えば、どんなお客さんにとっても、店内の清潔感やスムーズな動線設計などは常に大切です。
またメインターゲットが若い女性でも、「○○歳以下の女性限定クーポン」ばかりを頻繁に発行していると、それ以外のお客さんの足が遠のいてしまう可能性も。
メインターゲットからサービス内容を絞りつつ、他のお客さんも来店しやすいお店作りを意識しましょう。
詳細なターゲット設定が、人気店の鍵
ターゲットは、お店作りの土台となるコンセプトの、さらなる土台。飲食店の開業準備は、ターゲット設定から始まります。
「ターゲットを決めると店舗デザインの方向性が考えやすくなる」、「似たような属性のお客さんが集まって交流の場が生まれる」など、ターゲットを決めるメリットは様々です。
同業他店の事例も参考にしながら、「こんな人に来てほしいな」と思える、詳細で現実的なターゲット像を描きましょう。
「ターゲットを設定して経営計画を立てているけれど、これで上手く行くのか不安」「こんな人に来てもらえるような店舗デザインのアイディアを知りたい」など、お気軽にお問い合わせください。